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場外乱闘
中年童貞…なぜ生まれる? 「恋愛資本主義」の肥大化


興味深い本が登場した。その名も『中年童貞』(扶桑社新書)−。あからさまなタイトル通り、中年にいたるまで性交渉の経験のない男性の存在と実像を紹介して、中年童貞の生きる道を模索する。著者は34歳で童貞の渡部伸さん。女性との性交渉を望みながら、なぜ中年まで果たせない男性が生まれるのか。個人に起因する問題も大きいだろうが、「恋愛資本主義」に覆われた日本女性の意識にも原因を求めることができそうだ。

(桑原聡)

「恋愛資本」を持つ者が異性を独占

 「日本家族計画協会」の調査(平成16年)によると「性交渉の経験がない」、つまり童貞と答えたのは、25〜29歳=17.1%▽30〜34歳=6.3%▽35〜39歳=5.1%▽40〜44歳=7.9%−だった。日本では見合い制度の崩壊と出会いの機会の増大で、恋愛=結婚が完全な自由競争となったが、その半面、異性を魅了する「恋愛資本」を多く持つ者が異性を独占する状況が生じた。

40代の10%は童貞?

 「パラサイト・シングル」で知られる社会学者の山田昌弘氏は、自由競争の下で初めて顕在化する「魅力格差」を指摘した。男女の出会いは増えても、恋愛資本の乏しい男性には利用できず、逆にその状況を一層困難にしてしまう。つまり「次の機会にもっといい男性が現れるかも」と女性は考えるからだ。

 このようなパスの連鎖の結果、童貞のままという男性は「調査結果より多いはず」と渡部さんは指摘する。「男は見えっ張りですから。私は40代の10%は童貞だとにらんでいます」

「全国童貞連合」

 渡部さんは広告・編集プロダクションのデザイナーのかたわら、8年前に同じ境遇の男性に呼びかけ、「全国童貞連合」を立ち上げた。「恋愛を通じた」童貞喪失を目標に自己変革の活動を続けてきたが、渡部さん自身は現在も童貞のままだ。さまざまな取材を受ける中、英BBCの記者には「英国でいい年をした男が童貞であることを公言したら、街を歩けなくなる」と言われたという。

“高飛車”の姿勢貫く

 渡部さんは、現代女性について「男性に対し高い要求水準を掲げ、自分からけっして折れようしません」と嘆く。なぜ女性は“高飛車”の姿勢を貫くのか? 本田透氏が『萌える男』で興味深い分析をする。「80年代に、フェミニズムと空前のバブル景気がたまたま同時に勃興(ぼっこう)したため、フェミニズムがもたらした女性の経済的・精神的自立の流れと、バブルに後押しされた飽くなき消費活動への欲求とが不幸にも結びついてしまったのが、『恋愛資本主義』システムの肥大化の原因なのではないだろうか」。

ドラマや雑誌で浸透

 原型は80年代の社会、経済動向により形成されたというわけだ。自分の欲望に忠実で妥協をしない女性像は、90年代のテレビのトレンディードラマや雑誌を通じて、若い女性に浸透していったといえる。

 渡部さんは言う。「バブル期の三高の条件では、背は無理でも学歴と収入は努力でカバーできました。いまでは、経済力に加えてセンスや雰囲気、コミュニケーション能力が要求される。これは生来のもので、スキルアップは難しい…。中年童貞の問題は少子化の問題に直接つながっているとも思うのですが、どうでしょう」。

産経新聞 07年6月26日 火曜日 社会面